WordPressは、世界規模で高い人気と圧倒的なシェアを持つCMS(コンテンツマネジメントシステム)です。
個人ブログから大企業の公式サイトまで幅広く導入されており、Web制作における事実上の標準(デファクトスタンダード)と言える存在になっています。
ただし、普及の事実そのものは広く知られている一方で、
「なぜWordPressがここまで選ばれ続けているのか」
「今後も主要なCMSであり続けるのか」
という点については、表面的な理解にとどまるケースも少なくありません。
本記事では、公開されている利用データを起点にWordPressの現状を整理し、普及の背景にある構造的な理由、競合サービスとの関係、そして将来性と注意点について、専門的な視点から考察します。
もくじ
WordPressの利用状況
WordPressは、世界のWebサイトにおいて他を大きく引き離すシェアを誇っています。

W3Techsの調査(2025年9月時点)によると、全Webサイトの43.3%がWordPressを利用しており(図1)、さらに「CMSを利用しているサイト」に限れば60.7%がWordPressを採用しています(図2)。
図1・図2を見れば、WordPressが単独で過半数を占め、他のCMSを大きく引き離していることが一目で分かります。
この圧倒的な差は、単なる人気の高さではなく、WordPressがWeb制作における事実上の標準として受け入れられていることを裏付けています。
WordPressが選ばれる真の理由
WordPressが「人気だから選ばれている」のではなく、選ばれるべくして普及してきた構造的な理由があります。
その根本にあるのが、オープンソースという仕組みです。
WordPressはソースコードが公開され、誰でも自由に利用・改変できます。
世界中の開発者が改善や機能追加に参加できる体制が整っており、この「オープンソース文化」があるからこそ、WordPressは今もなお進化を続けています。
資産としてのエコシステム
プラグインは59,000以上、テーマは11,000以上にのぼります。
これらは単なる「機能の数」ではなく、他のCMSが追随できない巨大な資産を意味しています。
豊富なプラグインやテーマの存在は、ユーザーが必要とする機能をすぐに実現できる環境を整えており、この拡張性こそがWordPressの競争優位性を支えています。
技術的な拡張性とカスタマイズ性
コアコードが公開されているため、開発者はAPIやフックを用いて自由に機能を追加できます。
その結果、会員制サイトや大規模ECサイトなど、企業の高度な要求にも柔軟に対応可能です。
エンタープライズ領域でいまだに多くの企業に採用され続けているのは、この無制限の拡張性とカスタマイズ性があるからにほかなりません。
情報と学習環境
世界中の利用者が情報を発信し、学習環境が整備されているのも大きな強みです。
初心者がつまずいたときでも解決策がすぐに見つかり、結果的に利用者の裾野がさらに広がっていきます。
こうしたエコシステム、技術的な拡張性、学習環境のすべてが、オープンソースという仕組みから生まれています。
WordPressがここまで普及し、今もなお進化を続けているのは、オープンソースならではの優位性に支えられているからだと言えるでしょう。
脅かす存在はあるか?ノーコードCMSとの「棲み分け」構造
近年、WordPressの競合として注目されているのが、WixやSquarespace、そして国産ではSTUDIOといったノーコードCMSです。
これらのサービスは直感的なエディタを備え、専門知識がなくてもデザイン性の高いサイトを迅速に構築できる点が大きな魅力です。
特に小規模ビジネスや個人のポートフォリオサイトにおいて、導入ハードルの低さが評価されています。
一方で、その構造的な限界から、大規模なWeb制作には不向きです。
プラットフォーム依存のリスク
ノーコードCMSは基本的にクローズドな環境であり、Webサイトという企業の資産を外部に預けることに他なりません。
ユーザーはサービス提供元の仕様変更や、最悪の場合のサービス停止リスクに直接依存することになります。
拡張性の限界
データベースやサーバー環境を自由にカスタマイズできないため、外部システムとのAPI連携や高度なデータ処理を要する大規模案件には、構造的に対応できません。
結果として、複雑な要件や高度なセキュリティを必要とするサイトでは、WordPressが引き続き優位に立っています。
総じて、WordPressとノーコードCMSは「どちらが優れているか」という単純な競合関係ではなく、用途に応じた棲み分けが進んでいるのが現状です。
小規模・シンプルな案件ではノーコードCMSが選ばれる一方、拡張性・自由度・所有権を重視する現場では、WordPressが主要な選択肢であり続けるでしょう。
WordPressの将来性
WordPressの将来性を論じる上で重要なのは、単なる予測ではなく、開発コミュニティが公表しているロードマップに基づいて考えることです。
現在進行中のプロジェクトの中心にあるのが、Gutenberg(ブロックエディタ)の進化です。
この取り組みは「フェーズ1〜4」に分かれて進められており、すでに記事編集の大幅な改善が実現しています。
Gutenbergの進化(フェーズ3・フェーズ4)
今後の焦点となるのは、フェーズ3とフェーズ4です。
- フェーズ3
- 複数人で同時に作業できるリアルタイム共同編集機能の実装が予定されています。
- フェーズ4
- WordPressが長年の課題としてきた多言語対応に取り組む計画があります。
これらは単なるUI改善にとどまらず、WordPressがより大規模で国際的なプロジェクトに採用されやすくなる要素と言えるでしょう。
コミュニティによる継続的な進化
WordPressの強みは、開発者や利用者が世界中に存在し、持続的に支え続けている点にあります。
特定の企業がサービス提供をやめれば消えてしまうプラットフォームとは異なり、オープンソースの共同体が存続する限りWordPressは進化を続けると考えられます。
さらに、WordPress開発コミュニティはアクセシビリティやWeb標準への準拠を強く意識しており、WAI-ARIAやセマンティックHTMLの採用が積極的に進められています。
これは公共性の高いWebサイトや大規模案件にとって不可欠な要素であり、技術的にクリーンで持続可能なプラットフォームとしての地位を裏付けています。
こうしたロードマップとコミュニティの姿勢を踏まえれば、WordPressが今後もCMSの主要な選択肢であり続ける可能性は極めて高いと言えるでしょう。
専門家が指摘する注意点
WordPressは圧倒的な普及と柔軟性を誇りますが、万能ではありません。
専門家の視点から見ると、利用にあたって押さえておくべき注意点が存在します。
品質のばらつき
オープンソースの宿命として、プラグインやテーマの品質には大きな差があります。
公式ディレクトリに登録されているものでも、更新が止まっていたり、コード品質が低い場合があります。
適切な選定眼を持ち、信頼できる開発元のものを採用することが重要です。
セキュリティリスク
WordPressは利用者が多いため、攻撃対象になりやすいという事実があります。
特に古いバージョンやメンテナンスされていないプラグインを放置すると、脆弱性が突かれるリスクが高まります。
ただし、コアのセキュリティ自体は高水準に保たれており、定期的なアップデートと適切な運用体制を整えれば、致命的な問題に発展する可能性は低いと言えるでしょう。
運用コスト
「無料で使えるCMS」という側面ばかりが強調されがちですが、実際にはテーマやプラグインの導入、ホスティング環境の整備、保守運用などに一定のコストがかかります。
初期費用が安いからといって放置すれば、結果的に大きな負担につながるケースもあります。
WordPressは強力なツールである一方で、正しい理解と運用があってこそ真価を発揮します。
適切な管理を前提にすれば、デメリットは十分にコントロール可能です。
まとめ
WordPressは、世界規模で高い人気と圧倒的なシェアを誇るCMSです。
その背景には、オープンソース文化が生み出したエコシステムと拡張性、学習環境という強固な基盤があります。
近年はノーコードCMSの台頭もありますが、それはむしろ「用途に応じた棲み分け」として整理できるものであり、WordPressの優位性を揺るがすものではありません。
さらに、Gutenbergを中心としたロードマップの進化や、Web標準・アクセシビリティへの対応など、将来に向けた取り組みも明確に進んでいます。
これらは、単なる一時的な流行ではなく、持続的に進化し続けるプラットフォームであることを示しています。
もちろん利用にあたっては、プラグインやテーマの品質、セキュリティ、運用コストといった注意点も存在します。
しかし、それらは正しい理解と管理によって十分にコントロール可能です。
総合的に見て、WordPressは今後もWeb制作における事実上の標準であり続けると断言できるでしょう。